第21章

「それで? あの人、承諾したの?」

三村加奈子と大島莉理はカフェの席に向かい合って座り、スプーンでコーヒーをゆっくりとかき混ぜていた。

大島莉理は短く答える。

「ううん。まだ」

田中尚哉という男は支配欲が強い。いったん手に入れたものは、物であれ人であれ、そう簡単に放さない。

「でも、あの権利はもともと莉理のものじゃない。なんであいつが占有してるのよ」

三村加奈子は憤りを隠そうともしない。

大島莉理は口元をわずかに上げた。

「……私、本当の身分は言わないつもり」

本当は、最初に打ち明けるつもりだった。

妊娠が分かったあの日、全部を正直に話そうと決めかけたのだ。

彼女は結婚...

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